日本政府が「オープンデータ2.0~官民一体となったデータ流通の促進」を公表

政府の高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部が「オープンデータ2.0—官民一体となったデータ流通の促進」を公表しました。

引用元 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/dai69/siryou3_2.pdf
発信日2016年5月20日

【オープンデータ 2.0】官民一体となったデータ流通の促進~課題解決のためのオープンデータの「実現」~

平成28年5月20日
高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定(案)

我が国は、これまで「電子行政オープンデータ戦略」(平成24年7月4日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)1等に基づき、 オープンデータの取組を推進してきたところである。昨年6月には「新たなオープンデータの展開に向けて」 (平成27年6月30日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部決定)を策定し、

  • 課題解決型のオープンデータの推進(府省庁の政策決定過程にオープンデータによる対応の検討をビルトイン化2、ユースケースの情報発信等)
  • データの公開と利活用の一体的な推進

という基本的な考え方の下、重点的に取り組む事項を整理し取り組んできたところである。また、国の取組状況も踏まえて策定した「地方公共団体オープンデータ推進ガイドライン」や、地方公共団体向けオープンデータパッケージ3の開発及び提供、オープンデータ伝道師の派遣、オープンデータの利活用事例を課題の類型毎に整理した事例集(オープンデータ 100)の取りまとめ開始など、地方公共団体におけるオープンデータの推進も支援している。

さらに、今後は国や地方公共団体のみならず、独立行政法人や公益企業等におけるオープンデータの取組についても対応を促すなど、オープンデータの取組を更に拡大していくこととしている。このような取組の中、これまで政府のデータカタログサイト4の開設(データセット数は約 16,0005)、政府標準利用規約 2.0 の策定等の環境整備を行ってきているほか、オープンデータを活用した様々な課題の解決事例も出てきている。

現在、我が国は今後の超少子高齢社会に備え、「一億総活躍社会の実現」、「女性の活躍促進」、「地方創生」、「2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会」等の政策課題に取り組んでいるところ、近年の IoT、AI の開発・普及の進展も踏まえ、ネット上に流通する多種多様なデータの利活用により、これらの政策課題の発見(見える化)・解決に資することが求められている。また、我が国の政策課題への対処に加え、国連開発計画が策定した持続可能な開発目標(SDGs6)など国際的な取組も意識した対応が必要である。

このような中、今後の取組においては、「電子行政オープンデータ戦略」や「新たなオープンデータの展開に向けて」等における基本的な考え方等を継承しつつ、課題解決型オープンデータの推進の具体的な「実現」を目指し、これまでの取組を更に強化させていくことが必要である。
なお、課題の解決に当たっては、オープンデータのみで全てが解決するものではなく、オープンデータと企業等が保有するデータ等の組み合わせによる更に付加価値の高いデータの利活用によるところも大きいと考えられることや、地方公共団体におけるオープンデータの取組を支援していくに当たっては、全国一律の対応だけではなく、それぞれの地域の特徴を踏まえた自主的な対応を促していくことに留意することが必要である。

1.オープンデータの更なる深化

前述のような観点から、これまでの考え方に以下の点も加味しつつ、2020 年までを集中取組期間と定め、政策課題を踏まえた強化分野を設定し、オープンデータの更なる深化を図る。(「オープンデータ 2.0」と位置付け)

  1. 政策課題を踏まえた強化分野を設定することにより、当該分野の公開を推進し、利用者が課題の気付き・解決に取り組む中で、別のデータ公開のニーズ等が生まれ、更なるオープンデータ化が進むオープンデータサイクルを促進
  2. 国及び地方公共団体におけるオープンデータの取組を進めるとともに、民間企業等におけるオープンデータ的な取組についても一定の範囲内で協力を依頼(競争領域ではなく、協調的な領域)
  3. 地方公共団体における取組においては、防災等の地域を跨いだ共通的な分野における取組とともに、各々の地域特性に応じた自主的な取組も併行して促進

なお、強化分野以外の分野においても「電子行政オープンデータ戦略」や「G8 オープンデータ憲章」等に基づく取組については、引き続き実施する。
また、オープンデータを利活用する企業等から具体的ニーズがあるものについては、オープンデータ化を検討するとともに、データに法人情報が含まれている場合(調達、補助金交付、リコール届出、求人等の情報など)は、法人名だけでなく法人番号も付記して公開するなど、利便性の向上に努める。

2.強化分野の設定

我が国の重要政策に係る領域を強化分野として設定する。
(1)一億総活躍社会の実現に関する強化分野

  1. 希望を生み出す強い経済
  2. 夢をつむぐ子育て支援
  3. 安心につながる社会保障

(2)2020 年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に関する強化分野

  1. 大会の円滑な準備及び運営
    • セキュリティの万全と安全安心の確保
    • アスリート、観客等の円滑な輸送及び外国人受入のための対策
    • 暑さ対策・環境問題への配慮
    • メダル獲得へ向けた競技力の強化
    • アンチ・ドーピング対策の体制整備
    • 新国立競技場の整備
    • 教育・国際貢献等によるオリンピック・パラリンピックムーブメントの普及、ボランティア等の機運醸成
  2. 大会を通じた新しい日本の創造
    1. 大会を通じた日本の再生
      • 被災地の復興
      • 地域活性化
      • 日本の技術力の発信
      • 外国人旅行者の訪日促進
    2. 日本文化の魅力の発信
    3. スポーツ基本法が目指すスポーツ立国の実現
    4. 健康長寿・ユニバーサルデザインによる共生社会の実現
      • 大会を弾みとした健康増進
      • 受動喫煙防止
      • ユニバーサルデザイン・心のバリアフリー
3.地方及び海外への横展開

(1)地方への横展開
地方公共団体の取組においても、強化分野を含め、防災等の地域を跨いだ共通的な分野については、地方公共団体間のデータ連携や、データ形式の標準化等も検討しつつ推進する。また、政府 CIO による地方公共団体への訪問や、オープンデータ伝道師の制度を活用した地方公共団体への人の派遣、オープンデータパッケージ及びオープンデータ100 の横展開のみならず、地方の特性に応じた課題解決に向けた取組を支援することで、地方公共団体への普及啓発や利活用に向けた取組を促進する。

(2)海外への横展開
伊勢志摩サミットにおいて、G7 各国のオープンデータ憲章に関するこれまでの取組状況を取りまとめる。また、防災等の各国共通の課題に関する分野も考慮しつつ、利活用に焦点を当てた新たな指標(グローバルインデックス)を策定するとともに、OECD の取組(OURdataIndex8)をはじめとする国際機関等の取組と連携を図りつつ、海外に展開していく。さらに、内閣官房において地方公共団体向けに開発したオープンデータパッケージや、地方公共団体向けガイドライン及び手引書、事例集(オープンデータ 100)等を、アジアを中心とした海外に発信していく。

4.今後の進め方

(1)体制構築及び進捗管理
府省庁の政策決定過程におけるオープンデータのビルトイン化については、各府省庁に新設された「サイバーセキュリティ・情報化審議官」等を筆頭とした府省庁内横断的な体制を整備し、推進する。
また、府省庁においては、各分野の公開・利活用推進に係る KPI を、2016 年夏を目途に策定するとともに、内閣官房において定期的にその進捗状況を確認するなど、PDCA サイクルを確実に実施する。これらの取組に当たっては、関係府省庁の協力の下、内閣官房 IT 総合戦略室が中心となり、独立行政法人、公益企業のみならず、民間企業等におけるデータ公開についても関係団体も含めた協力依頼を推進していく。さらに、近年の AI、ロボットの開発・普及の進展も踏まえ、例えば IoT デバイス等から得られるデータについても、オープンデータとしての利活用の可能性も踏まえ、公開を促進する。

(2)データ連携に関する標準化、政府カタログサイトの機能拡充、オープンデータの普及啓発・人材育成
異なるデータベース間でのデータ連携に関する標準化や、誰にでも使いやすいインターフェースについて検討する。政府のデータカタログサイトについては、例えば業務の外部委託を行う場合には、その成果物等のオープンデータ化も契約に含めることを検討する等、登録作業の簡素化を図るとともに、登録しやすいシステム環境の整備など機能の拡充を検討する。また、オープンデータの利活用を促進するため、引き続き、国民におけるオープンデータの認知度の向上や、民間企業等が保有するデータの公開に資するよう、オープンデータ活用事例の収集・提供や、国民にとって分かりやすい普及啓発、オープンデータの利活用を意識した教育、人材育成を推進する。